一度訪問してみませんか、変りゆく学校を
ー 子ども、先生、親も元気な学校紹介 ー
松浦善満*1・中川 崇*2
*1和歌山大学教授
*2 同 大学院生
はじめに
桜中学校のシンポジウムは参加者に幾つもの衝撃と感動を与えました。学校なんて
ずっと変らないのではと思っていた私たちの目の前で、校長先生から、生徒が自分で
時間割を選択できたり、生徒だけの居場所のある学校建築、生徒や親の参加する学校
協議会などがつぎつぎ話され、その模様がビデオで映しだされたのですから、驚かな
い方が不思議なくらいでした。
しかし、この学校と同じではありませんが、いま全国各地で学校は変りつつあるの
です。私たちの住む和歌山にも子どもの希望や願いに沿った学校づくりがすすめられ
ていることをご存知でしょうか。ここではそのいくつかを紹介したいと思います。
これらの学校へは私自身何回か足を運んだところもありますし、校長先生や教職員、子
どもたちと話し合ったところもあります。また研究室の院生や学生が訪問したところ
も幾つかあります。詳細はまたの機会にしますが、とりあえず学校の特徴と所在地案
内をしますのでよければぜひ訪問してみてはいかがでしょうか。
1、不登校や高校中退の生徒が元気に活躍している高校
(1)北海道北星余市高校
不登校や高校中退の生徒を全国から受入れ、彼らの自立と旅立ちを支え励ましてき
た私立高校。最近は関西からこの高校に進学する生徒も多く着実に実績をあげ社会的
評価も高い。マスコミでもしばしばその教育活動が紹介されている。北海道大学の教
育研究室と連携して学習内容の科学化にも取り組んできた。大阪をはじめ和歌山でも
学校紹介とシンポジウムが毎年おこなわれている。和歌山大学の学生たちも当校を訪
問している。
【所在地】〒046─0003 北海道余市郡余市町黒川町96
Tel 0135─23─2165,2166,22─6211
Fax 0135─22─6097
【校長先生】深谷 哲也
(2)愛知県黄柳野高校
篠ノ井旭高校の若林繁太校長を迎え1995年開校した私立高校。上述の北星余市高
校と同様、不登校、高校中退生徒を受入れ生徒の希望を大幅に取入れた教育課程を実
施している。校則なども教師側のおしつけは一切しない。全国からカンパを集めて校
舎建設がおこなわれ、教員も全国から募集して集めた。
【所在地】〒441─1623 愛知県南設楽郡鳳来町黄柳野字池田663─1
Tel 05369─4─0330
Fax 05369─4─0331
【校長先生】広林 卓
2、総合学科(総合学習を含む)をつくり楽しい学習をめざす高校
(3)和歌山県和歌山高校
全国に先駆けて教育内容の総合化を行い、普通科や職業科にないユニークな科目を
設定し、選択科目も増やした。また、生徒も全県から広域募集している。
教員の加配等によって教育内容改革を進めた結果、入学希望者が増え学校全体のレ
ベルアップがはかられた。ただし総合学科については大学入試との関連で今後の課題
も残されている。
【所在地】〒649─6264 和歌山県和歌山市新庄188
Tel 0734─77─3933
Fax 0734─77─4928
【校長先生】北澤 誠士
(4)高知市立高知商業高校
高校野球全国大会の常連校。近年生徒会活動の活性化をはかり、ラオスやモンゴル
に小学校を建設する取り組みは全国的に有名になり97年度読売教育賞を授賞した。
生徒たちの学習意欲も高まり、カリキュラムに東南アジア学習などが新たに設定され
た。昨年6月、和歌山大学から教員、学生、院生による当校への聴き取り調査がおこ
なわれた。参加者一同感激。(報告書「メコン川を渡った高校生たち」を参照ください)
また昨秋、この学校の生徒会役員と担当教員が和歌山での高校シンポジウムに参加し、
多くの参加者に感銘を与えた。
【所在地】〒780─0947 高知県高知市大谷6番地
Tel 0888─44─0267
【校長先生】横山 冨士雄
3、地域に開かれた中学校
(5)和歌山県南部川村立上南部中学校
梅の里に所在するこの学校は、以前、全国並みに荒れたこともあった。校長をはじ
め教職員の努力で、ふるさと教育の一環としてとりくまれた「花の宅配便」活動はつ
とに有名になった。生徒と教職員の土づくりから始まりやがて校舎の敷地狭しと四季
折々の花が咲き乱れる。花を咲かせるだけでなく、花の苗を地域の人達に注文をとり
宅配する。その結果生徒と地域の人々との人間的絆が深まり、それが生徒の心を豊か
にする。
私たちがいつ訪問しても、先生と生徒たちが気持ちよく迎えてくれ授業参観もでき
る開かれた学校である。
【所在地】〒645─0021 和歌山県日高郡南部川村東本庄91
Tel 0739─74─2044
Fax 0739─74─3387.74─8007
【校長先生】西川 亮輔
(6)和歌山県竜神村大熊小学校
全校児童数わずか十名の小さな学校だが、子どもたちはすこぶる元気で明るい。
情報教育の推進校として「こねっとプラン」に参加、本学の附属小学校児童とのとの
テレビ会議授業をはじめ交流学習もおこなっておりNHKでも活動が紹介された。
本年3月、和歌山大学の学生三十八名と教員、職員、ならびに県教育委員会のメン
バーが1泊2日の日程で当校をはじめ竜神小・中学校を訪問した。とりわけ当校では
休日にもかかわらず子どもたちが「竜神太鼓」で出迎えてくれた。参加者一同感激。
(「和歌山大学教育学部教員養成課程合宿研修報告書」参照)
【所在地】〒645─0525 和歌山県日高郡龍神村龍神485
Tel 0739─79─0411
Fax 0734─79─0720
【校長先生】古久保 和壽
4、壁のない学校(オープンスペーススクール・オープンスクール)
(7)和歌山県和歌山大学附属小学校
オープンスクールは愛知県の緒川小学校など古くからの有名校もあるが、本学附属
小学校もユニークなスペースをもつ学校である。
どの教室も廊下側の壁がなく教室空間が広い。したがって隣の教室との敷居も低く
子どもどうしの往来もスムーズである。また低学年は教室のサイドから中庭に子ども
達が自由に出入りできるので生活科などの授業は創造的に実施できる。
【所在地】〒640─8137 和歌山県和歌山市吹上1丁目4─1
Tel 0734─22─6105
Fax 0734─36─6470
【校長先生】松岡 勇二
(8)きのくに子どもの村学園
和歌山県橋本市の廃校を利用してに十年前に設立された私立学校。イギリスの自由
教育家A・S・ニイルを研究する堀真一郎氏(当時大阪市立大教授)によって設立さ
れた。
子どもプロジェクトによる時間割の作成と教師の子どもに寄り添う指導原理はユニ
ークである。本年四月から高校を増設し小・中・高一環の自由教育を試みる。
私の研究室の院生もしばしば当校を訪問し調査し論文にまとめている。
【所在地】〒648─0035 和歌山県橋本市彦谷51
Tel 0736─33─3370
Fax 0736─33─3043
【校長先生】堀 真一郎
5、木質建築で快適な生活空間の学校
(9)和歌山県南部川村立清川小学校
いま、子どもたちの学校ストレス解消をはかる方策の一つとして、木造、木質の学
校建築が見直されてきている。和歌山県においては間伐材利用も兼ねて県木材利用推
進協議会ならびに各市町村により木質の学校建設が進められている。当校もそのうち
の一つである。本学のゼミナールも昨年十一月当校を訪問して実に落ち着いた雰囲気
を味わうことができた。また机・椅子も木質加工で一年生から六年間使えるように工
夫されている。
ビデオ(監修池際博行・制作県材木利用推進協議会「いま木と共に」)に収録して
いるのでぜひ参照ください。
【所在地】〒645─0201 和歌山県日高郡南部川村清川2340
Tel 0739─76─2002
Fax 0739─76─2067
【校長先生】上村 修
(10)京都府美山郡美山町宮島小学校
この学校も村の間伐材・材木を利用して木質の学校建築である。当校では学校を村
の文化遺産としても位置付けており学校のデザインも立派である。
当校では校舎は無論、子どもたちは校舎内ではスリッパ代りに藁ぞうりを全員がはい
ているのにも驚かされた。校長先生にお聴きすると木質校舎は冬に結露を作らないし
、なによりも子ども健康によいとのコメントをいただいた。
ビデオ(監修池際博行・制作県材木利用推進協議会「いま木と共に」)に収録してい
るのでぜひ参照ください。
【所在地】〒601─0751 京都府北桑田郡美山町字島
Tel 0771─75─0017
【校長先生】渡辺麻乃
6、コンピュータを活用した創造教育を進める学校
(11)新宮市熊野川小学校
三重県と奈良県と本県の県境に接する小さな村の小学校である。自然とコンピュー
タを有効に活用した「たんぼ水族館」やインターネットを活用した横浜本町小学校な
どとの交流は、すでにテレビや書籍でも取り上げられている。湊 秋作教諭、山中 昭
岳教諭(和歌山大学松浦ゼミ)を中心に情報教育やコンピュータの特性を生かした総
合学習などの授業づくりをすすめている。
【所在地】〒647─1211 和歌山県東牟婁郡熊野川町日足570
Tel・ Fax07354─4─0313
【校長先生】植松 修