平成14年6月29日
総合学習で変わる、子ども・学校・地域
和歌山大学生涯学習教育研究センター
「『生きる力』とはほど遠い実践が多く行われているのでは」、「総合学習より、
もっと教科学習が必要なのではないか」、「総合の時間を教科での学習を活かすも
のとするならば、もっと基礎学習が必要なのでは」、「教師の多忙の現状・経費の
問題など、総合的な学習の時間を進める条件整備が不十分ではないか」、「総合学
習のようなものはやめて基礎教育を徹底すべきではないか」
和歌山市立小学校教諭・松房正浩氏は、「江戸時代の農業の発達」という社会科の
単元をさらに深くおしすすめる中で、地域に飛び出し実際の農業体験や聞き取り調
査などのフィールドワークを通して学びを進めていった実践を紹介した。松房氏は、
この単元における指導感を次のように紹介した「見ているようで観ていない、知っ
ているようで知らないことがたくさんある子ども達。学校のとなりにすぐ水田があ
るにもかかわらず、お米がどこに実るのかを知らない。(芋のように)土の中にで
きると答える。葉の付け根にできると答える。先端にできている粒はなにかと問う
と、わからないと答える。こんな子どもの生活現実を元にどうやって農業学習を価
値あるものとして高めるか。薄っぺらな知識として農業を学ばせるのでは意味がな
い」。こんな指導観の元、総合の時間を利用してのフィールドワークに取り組んだ
ことを語った。
写真家・徳田直季氏は、昨年度に和歌山市立大新小学校五年のクラスの総合の時間
に、地域からのゲストティーチャーとして参加し写真展を行った経験を語った。
「みんなに見てもらえてよかった」「世界でたった一つの写真」大新小学校の子ど
も達の感想で多かったこれらを取り上げ、徳田氏はドキドキ感・ワクワク感と表現
し、「子どもたちの学びに、大切なこと」と語った。
今、総合の時間をめぐって、「しっかりとした指導方針を持って総合の時間に取り
組んでいかないと、打ち上げ花火のようになにか大きなことをして得る自己満足で
終わってしまうことも・・・」という不安の声が教員の中でも、教育の行方に注目す
る市民の中でも多く飛び交っている。子どもの課題を分析・把握することなく、当
り障りの無いその場しのぎのように行われる実践もあると聞くが、しかし、そんな
授業をする教師を「力不足」として一掃するのは全くのナンセンスで、「総合的な
学習の時間」の立案から採用までの間に現場での十分な議論の時間の保障がなかっ
たという施行上の問題があることに目を向けなければならない。そんな、総合的な
学習の時間へのとまどいと既に施行された新学習指導要領の真っ只中、今回紹介さ
れた三つの実践は、あらためて「目の前の子どもは、どんな課題を背負っているか」
「この取り組みをとおして子どもたちはいったい何を学ぶのか」を十分考慮した実
践だった。パネルディスカッションにおいて、紀の国子どもサポートネット副代表
の島久美子氏が次のような指摘をした。
川本氏は、ディスカッションの終わりに「教科学習で学ぶ『知識』というもの自体
が、学び方があまりのも強調されるがために結果として軽視、ないしは否定される
傾向にある」ことにふれた上で、地域にも学校にも相互に協力し合う基礎ができつ
つある今、改めて、子どもに何を育てなければいけないのかという発想とそれの教
育課程上の位置づけが重要になってくるだろうと語った。
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